MINOLON(ミノロン)研究・開発素材

MINOLONシート
MINOLON sheet
 
ミノムシが作り上げるシート
MINOLON(ミノロン)シート

MINOLONシートとは


「MINOLONシート」は、「細くて繊細 だけど強い」という、ミノムシ繊維の特性を活かした薄いシートです。私たちは、ミノムシの生態学的な研究を通して培ったノウハウによって、ミノムシ自身がMINOLONシートを作り上げる製法を確立しました。

MINOLON(ミノロン)シート

MINOLONシートの構造


MINOLONシートは、一見すると一般的な不織布のようですが、実態はミノの内側と同様の構造を有しています。ミノムシ自身が作り出す天然の接着成分によって、ランダムに重なったミノムシ繊維同士が接合されており、受けた力を広範囲に分散できる構造になっています。

MINOLON(ミノロン)シートの構造
MINOLON(ミノロン)シートの構造

 

ミノムシ繊維の特徴を付与した

新素材への展開


MINOLONシートは、様々な既存素材と組み合わせることが可能です。私たちはこれまでの研究において、MINOLONシートとの複合により、既存素材単独では到達できない特徴的な性能が発揮されることを明らかにしています。今後、幅広い分野で、MINOLONシートの特性を活かした新素材の革新的な展開が期待されます。


 CFRPとの複合
Composite with CFRP
 
MINOLONシートとCFRPの出会い
MINOLON(ミノロン)シート複合CFRP

CFRP × MINOLONシート


炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、軽さと強度を兼ね備えることが要求される製品に広く使用されています。このCFRPにMINOLONシートを複合することで、CFRPの特性を維持したまま、衝撃吸収性やタフネス性を付与できることが示されています。また、「CFRPのリサイクル」の観点からも、MINOLONシートとの複合による興味深いデータが得られつつあり、今後の展開が期待されています。

MINOLONシート複合CFRPの高速衝撃条件下の衝撃試験結果のグラフ

 

高速衝撃環境における特徴的な性能の付与


高速衝撃条件下の衝撃試験(10m/秒)において、MINOLONシート複合CFRPは、初期弾性率、タフネス性(破壊強度、破壊変位)に影響を与えることが示されました。
CFRP単体とMINOLONシート複合CFRPを比較すると、初期弾性率の低下、破壊強度(試験力)の上昇、破壊変位(変位)の上昇が認められました。つまり、MINOLONシートを複合することで、強い衝撃を吸収しつつ壊れにくいという特性を、CFRPに付与できることが明らかになりました。

薄い・軽量だからこその特性


薄く軽量なMINOLONシートは、CFRPと複合してもCFRP本来の性能を損なうことがありません。CFRPの強度特性を評価する「3点曲げ試験」、「シャルピー衝撃試験」、破壊時の層間剥離状態も評価できる「層間せん断強度」のいずれにおいても、MINOLONシートを複合することによる明確な影響は確認されませんでした。

MINOLON(ミノロン)シート複合CFRPの強度特性

  
  樹脂との複合
Composite with resin
 
ミノムシ繊維と樹脂の出会い 
環境配慮型FRP

FRPとは


繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)は、プラスチック原料に繊維を複合することで物性や耐性を強化したプラスチックの総称です。炭素繊維を複合したCFRP、ガラス繊維を複合したGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、アラミド繊維を複合したAFRP(Aramid Fiber Reinforced Plastics)などが知られています。
FRPは、軽くて強く加工も容易という特徴から、様々な製品に使用されています。一方で、壊れにくいという特性から、リサイクルの方法が限られる、マイクロプラスチックの原因になる等、SDGsの観点における課題も抱えています。

 

短繊維化したミノムシ繊維

 

ミノムシ繊維を活用した新たな挑戦


私たちは、FRPの新たな選択肢を提案するため、強さと環境への優しさを併せ持つミノムシ繊維と、生分解性を有するプラスチックを複合した、環境配慮型FRPの開発を進めています。

 

先例のない革新的な特性


短繊維化したミノムシ繊維を、生分解性を有するプラスチックに複合したFRP(ミノムシ繊維FRP)を作製し、物性を評価したところ、非常に興味深い特性が示されました。
一般的に短繊維を複合したFRPは、比較対象として評価したカイコシルクFRPのように、強度(試験力)、弾性率が上昇し、伸度(変位)は低下することが知られています。
ミノムシ繊維FRPは、生分解性プラスチック単独と比較して、伸度(変位)は同程度を維持しながらも、強度(試験力)、弾性率が上昇し、高いタフネス性を示しました。
このようにミノムシ繊維FRPは、先例のない革新的な特性を有しており、既存のFRPでは到達できなかった、新たな製品開発への展開が期待されます。

 

ミノムシ繊維FRPの伸度(変位)と強度(試験力)の評価グラフ